PUSからPEへ
現代、社会における科学館の役割は非常に大きい。世界の科学館の大きな傾向を見ると、以前には、PUS(Public Understanding of Science)とし、「一般市民の科学素養」の培養を大きな目標に掲げてきた。中国においても、「全民科学素養培養」という大きな目標を掲揚し、全国の科技館建設や科技館の活動促進が積極的に行なわれている。その後、次の段階として、Science Literacy(科学活用能力)という概念が登場した。ある程度、科学の知識が培養されると、その知識を実際の生活や社会で活用する能力が重要だということである。そして、現在は、Public Engagement for Better World を掲揚している。「Science Literacyを活用して、より積極的に社会参画をし、よりよい世界(社会)を築こう」という大きな理念に昇華している。来年2014年3月に、ベルギーで、「世界科学館サミット」SCWS2014が開催される。大変興味のあるところである。
研究、資料保存機能が充実している国立科学博物館の活動
国立科学博物館は、1877年開館で、日本で一番歴史のある総合科学博物館である。自然史、科学技術史の研究と資料収集保存が大きな目的である。動物、植物、古生物学、人類学、理工、産業技術関係の分野において、日本のトップ水準の研究者が日夜研究している。また、自然史産業技術史では、日本最大の資料数を有している。
科博においても、未来館と似た「サイエンスコミュニケーター」(科学普及員)を育成する活動を行なっており、特に、豊富な資料数を活かし、学校などへ、「資料の貸し出し」などを行ない、学習プログラムの開発支援など、学校教育支援を積極的に行なっている。科博の「サイエンスコミュニケーター」養成活動は、国の中央博物館として、全国各地の博物館や学校、企業などの人材育成機能を行なう活動をしていることが大きな特徴といえる。
「青少年のための科学の祭典」 科学技術館
科学技術館も、日本の国立の科学館である。他の2館同様、様々な科学普及活動を行なっているが、その中で、「青少年の科学の祭典」という科学イベントがもっとも注目すべき活動である。これは20年前に、日本の児童の「理科離れ」への対策として、始まった科学普及活動で、日本の全国各都市で、夏休みに行なわれ、実験ショー、科学表演、ワークショップを博物館、学校、体育館などで大規模に行なう科学の祭りである。
この「理科離れ」という現象は、世界共通の科学館が抱える課題でもある。アメリカでは、高校生くらいの10代の青少年をLost Generationと言う。小学生くらいまでは、科学はおもしろいが、中学、高校へと進学するにつれて、科学は難しくなり、興味を失う。。。ということである。この世代に対する科学館の訴求力は世界共通の課題であるといえる。
児童の意見を積極的に反映した展示設計
Children’s Museum of Indianapolis, USA
この児童博物館は、世界最大規模の児童博物館で、もっとも歴史のある児童博物館のひとつである。1924年開館。アメリカで生まれた「児童博物館」思想・理念で、もっとも感心するのは、展示の企画開発を行なう基本思想である。通常、博物館では、学芸員(Curator)が中心となって展示企画を行なう。つまり、科学・歴史・美術などの学術専門スタッフが中心となって、企画を行なう。しかし、児童博物館では、発想視点が異なる。「何を学ぶか?」だけでなく、「どのようにして学ぶか?」が大変重要なポイントとなる。児童博物館では、「知識」よりも、「知恵」がより重要だと言っていい。つまり「学び方を学ぶ」のが児童博物館の目的である。「学び方」の専門家は、学芸員ではない。それは児童の発達心理学や、教育学の専門家でなければならない。Educator という専門スタッフが児童の学習効果を考えながら、展示を企画するわけである。展示を企画する場合、まず、ターゲットを明確にする。年齢層によって、教育学習効果は異なる。「何を展示するか」よりも、まず「対象となる年齢はいくつか?」。この点を明確にし、目的とする学習目標(判断力、観察力、協同して行動する、など)を明確にするわけである。
アメリカでは、この児童博物館の手法をとりいれ、博物館でも、学芸員とEducatorが協力して、展示を企画するシステムを採用しているところが少なくない。このEducationという視点は大変重要で、参考となる。
What if? 児童の将来の夢は何か?
インディアナポリス児童博物館で、もっとも私が感心した展示がある。市の児童に直接アンケートをとり、膨大な意見から、希望を選択し、最終的に、児童が「将来、なりたい夢」を3つ展示として実現したものである。
1 古生物学者(恐竜の研究者)
2 深海探索
3 エジプト考古学者
現代、社会における科学館の役割は非常に大きい。世界の科学館の大きな傾向を見ると、以前には、PUS(Public Understanding of Science)とし、「一般市民の科学素養」の培養を大きな目標に掲げてきた。中国においても、「全民科学素養培養」という大きな目標を掲揚し、全国の科技館建設や科技館の活動促進が積極的に行なわれている。その後、次の段階として、Science Literacy(科学活用能力)という概念が登場した。ある程度、科学の知識が培養されると、その知識を実際の生活や社会で活用する能力が重要だということである。そして、現在は、Public Engagement for Better World を掲揚している。「Science Literacyを活用して、より積極的に社会参画をし、よりよい世界(社会)を築こう」という大きな理念に昇華している。来年2014年3月に、ベルギーで、「世界科学館サミット」SCWS2014が開催される。大変興味のあるところである。
研究、資料保存機能が充実している国立科学博物館の活動
国立科学博物館は、1877年開館で、日本で一番歴史のある総合科学博物館である。自然史、科学技術史の研究と資料収集保存が大きな目的である。動物、植物、古生物学、人類学、理工、産業技術関係の分野において、日本のトップ水準の研究者が日夜研究している。また、自然史産業技術史では、日本最大の資料数を有している。
科博においても、未来館と似た「サイエンスコミュニケーター」(科学普及員)を育成する活動を行なっており、特に、豊富な資料数を活かし、学校などへ、「資料の貸し出し」などを行ない、学習プログラムの開発支援など、学校教育支援を積極的に行なっている。科博の「サイエンスコミュニケーター」養成活動は、国の中央博物館として、全国各地の博物館や学校、企業などの人材育成機能を行なう活動をしていることが大きな特徴といえる。
「青少年のための科学の祭典」 科学技術館
科学技術館も、日本の国立の科学館である。他の2館同様、様々な科学普及活動を行なっているが、その中で、「青少年の科学の祭典」という科学イベントがもっとも注目すべき活動である。これは20年前に、日本の児童の「理科離れ」への対策として、始まった科学普及活動で、日本の全国各都市で、夏休みに行なわれ、実験ショー、科学表演、ワークショップを博物館、学校、体育館などで大規模に行なう科学の祭りである。
この「理科離れ」という現象は、世界共通の科学館が抱える課題でもある。アメリカでは、高校生くらいの10代の青少年をLost Generationと言う。小学生くらいまでは、科学はおもしろいが、中学、高校へと進学するにつれて、科学は難しくなり、興味を失う。。。ということである。この世代に対する科学館の訴求力は世界共通の課題であるといえる。
児童の意見を積極的に反映した展示設計
Children’s Museum of Indianapolis, USA
この児童博物館は、世界最大規模の児童博物館で、もっとも歴史のある児童博物館のひとつである。1924年開館。アメリカで生まれた「児童博物館」思想・理念で、もっとも感心するのは、展示の企画開発を行なう基本思想である。通常、博物館では、学芸員(Curator)が中心となって展示企画を行なう。つまり、科学・歴史・美術などの学術専門スタッフが中心となって、企画を行なう。しかし、児童博物館では、発想視点が異なる。「何を学ぶか?」だけでなく、「どのようにして学ぶか?」が大変重要なポイントとなる。児童博物館では、「知識」よりも、「知恵」がより重要だと言っていい。つまり「学び方を学ぶ」のが児童博物館の目的である。「学び方」の専門家は、学芸員ではない。それは児童の発達心理学や、教育学の専門家でなければならない。Educator という専門スタッフが児童の学習効果を考えながら、展示を企画するわけである。展示を企画する場合、まず、ターゲットを明確にする。年齢層によって、教育学習効果は異なる。「何を展示するか」よりも、まず「対象となる年齢はいくつか?」。この点を明確にし、目的とする学習目標(判断力、観察力、協同して行動する、など)を明確にするわけである。
アメリカでは、この児童博物館の手法をとりいれ、博物館でも、学芸員とEducatorが協力して、展示を企画するシステムを採用しているところが少なくない。このEducationという視点は大変重要で、参考となる。
What if? 児童の将来の夢は何か?
インディアナポリス児童博物館で、もっとも私が感心した展示がある。市の児童に直接アンケートをとり、膨大な意見から、希望を選択し、最終的に、児童が「将来、なりたい夢」を3つ展示として実現したものである。
1 古生物学者(恐竜の研究者)
2 深海探索
3 エジプト考古学者
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