世界をめざす  「科教興国」
 中国は、科技館づくりにおいても今、強く世界を意識し、世界水準に追いつき、またそれを追い越し、世界のリーダーを目指すという強い意志を感じる。2006年「全民科学素质行动计划纲要」によると、国内の人口100万人以上の都市に科技館を1館建設すると発表された。(2011年現在、人口100万人以上の都市は、300以上ある。)
 日本の科学館が青少年の「理科離れ」の防止や身近な科学への興味と言う、ある意味、非常に利用者や一般の人の視点から科学館づくりを考えていくのとは異なる。中国では、科学技術が国をつくり、科技館は、科学技術が描く未来や豊かな社会を体験できる場であるとことを表現し、人民の科学教育拠点としている。

3つの創新性
 中国の科技館づくりでは、常にいわれる言葉である。新概念、新主題、新技術。展示づくりにおいては、新しい概念をもち、新しいテーマや内容を考え、最新技術で実現するということである。「新概念」では、知識よりも体験による知恵の重視や、地球環境問題をはじめとした科学と社会とのつながりという思想など、国際的な動向を意識した概念などが掲げられる。
 そして、「新主題」としては、最近の科学技術研究の動向を受けて、脳科学、バイオテクノロジー、新素材、宇宙開発、ロボット、メディア、環境とエネルギー、創造といった総合的、学際的なテーマが扱われるようになってきている。

共通の課題
 現在の中国は科学技術と急速な経済発展のなかで大きな課題を背負っている。そして今の中国の科技館が共通にかかげるテーマは、世界の科学館や自然博物館と同様、持続可能な社会発展である。科技館は、中国の人民に対して自国の経済発展や生活の向上だけでなく、地球市民の一員として、限りある地球資源への意識、世界は一つであるという意識の啓発の場として科技館を位置づけようとしている。

眼を見張る展示技術力
 中国科技館、上海科技館や広東科学中心など最近開館した展示内容や展示装置の技術レベルを見れば、中国の科技館づくりは、すでに世界水準にあるといえる。中国の科学館関係者は欧米や日本の先進的な科学館を徹底的に調査し、参考にして、見事に実現している。
 映像や模型の複合演出装置や、来館者の画像を取り込んで画像処理する技術、バーチャルリアリティ、自動車や乗り物の運転シミュレーション、そしてセンサーを備え自律走行する知能ロボットなど。基礎科学の体験からITを活用した先進技術体験まで、しっかり展示装置化に成功している。
 私が中国で展示設計の仕事をはじめた5年前の時点は、ここまで技術が進歩するとは思いもよらなかったことである。今の中国は、かつての日本が欧米の先進技術を模倣することから技術を急速に習得したのと同じように、かつての日本以上のスピードで、展示技術を進化させているという印象を強くもった。今では、日本で実現している展示技術は、基本的には中国でも実現可能であると言える状況になっている。

重厚長大な展示を好む
 中国の科技館の展示づくりでは、象徴的な展示というのが強く意識される。その科学テーマを代表する重要な展示と言う意味である。そして、世界初、世界一といった独創的で迫力があり、先進的で大掛かりな技術展示が好まれる。
 日本でも、かつては中国と同じであったが、最近では、重厚長大な展示より、より来館者の五感や体験性を重視した素朴で、自由度の高い単純な体験展示(hands-on展示)が好まれる。このような展示は、来館者や一般市民が展示づくりに参加可能であったり、館内の職員が展示更新が可能であったり、低コストで運営がしやすい展示への要望から来るものである。
 そして、中国では、まだhands-onという概念は定着していない。Hands-onを利用者の視点に立って、学習欲求や学習水準に応じて、五感を刺激して、自分の手で自由に工夫して何度でも体験できるという意味に解釈すると、中国では単純に、「参加体験性」という意味でしか使われていない。これは、単純な映像などを除いて、体験できるものはすべて「参加体験性」ということになる。これは、展示づくりが、まだまだ利用者の学習欲求や傾向に基づいて、行われていないことと関係があると思う。

力を入れる児童の科学啓発
 中国では、1980年代に開館した中国科技館の時代からすでに、一般の科学展示とは別に、幼児を対象にした科学啓発展示が充実していた。日本でも、中国科技館ほど、大規模な児童展示室(館)をもった科学館はない。これは中国が以前から児童の科学啓発や創造性教育に力を入れてきた証拠である。中国の科技館には、必ず、一般の展示とは別に児童展示室がある。上海科技館、広東科学中心、浙江省科技館も同様である。これは、欧米の科学館の影響を受けた結果であると思うが、大変すばらしいことである。
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